晴天の寒空に棲む
殊ならぬ日の眠気
2017年のねむりゆく空
花を数え 旅立つ鳥
多元的な夢の針穴を
人の心の条理が通る
それが夢だと知るまでに
いくつの苦しみを数えたろうか
雪を被った枝の上で鳥が鳴く
シナプスは朝日を受けて興奮し
雪の花を散らせるのだった
嵐もなく 淡々とした日の始り
水面を突いて搔きまわした夜
兀々と築かれゆく神経の牙城
連理の枝は固く結ばれ
日はいまに現成す
混濁なる鍋の音
浮き沈みする心象模様を
沸々と舌の上に乗せる
言葉がそこにはあった
多くを秘めていた氷も
陽の光にとけるように
硬くていびつな感情も
きっとやわらかくなる
郷里の寺に雪つもり
妙なる樹の枝にものり
彼処に鳥を聞くように
思い出される君の声
白紙に綴られた みちびきの字
「銀」と書かれた 年末の日
しろがねと呼んだ 春の声
消えてまた 風がしきりに吹く
身体の深い呼吸は眠るよに
重なる冬の織物に関わらず
夜空の高い一等の暗がりに
悠かな先の生命を宿してく
あゝ足袋かさなる跡の思い
踏み分けゆく哲学の郷里の
知られぬことぞや多くある
身体はもはや老樹のように
青い硝子を通して見る太陽は
少しばかり硬そうだった
あれは冬のはじまりで
変幻の炎が見えていた
吹きけした蝋燭の火
かおり ゆれ とける 雪
もし貴方がいたなら
時は止まるべきだったのに
去年の柳の月簾
電飾の街盛り
穏やかなまぼろしに戯れ
時を虚ろに映しけり
貴方はそこから始まったのですね
私はここから始まるのです
伝統と破壊が交錯する
器の切れ目から
光陰を矢に掛けて放ち
無性の時を川の流れに見たて
儚いと呼び 詠うものたち
哀しむものたち
此の坐を大雄峰に置き
無性の間を夢に見たて
侘しいと呼び 詠うものたち
みな 有象無象の執着なり
凍てつく黒鉄
シンフォニーの行進
もう寒くなどない
街を限りに闊歩しよう
緊張解れた朝日を
心理の丘から眺めるも悪くない
頞哳吒地獄の光みえて
鈍き血流の蜘蛛が這いずり廻る
冷たい水は私の罪を知っている
渇いた喉に炎立ち
灰山と化す魂の
その不憫な姿態を暴き出す
睡気の張り裂ける朝の空気
閉ざされたカーテン
起き上がるまでの狂気
根拠なくひとつ引き鉄をひく
灯りがひとつ点きました
寒き日はこれから
夜の冷たい水の無知を
しずかに充たしてきます
渦巻くことわざ
空想の肌にふれる喜び
ことごとくわたり
はじまりをまつ
テルミモアの夢地続き
寒波の法螺吹き妨げり
遠き息吹きの口蓋垂に
刹那輝きしぞある
この土地は歩調の風立ち
波々し膚をもち
西の彼岸にほど近く
鬼の骸に花ぞ咲く
行方もあらず廻りては
生へと還る笛の音
やふこそ さらば
心唯なる高き燈火
彼是の人や他の誰にもなることはできないと、他の誰にもならなくてよいと証明できはしない。近世を神の下界として信じたように、私はまた誰も私のようになることはできないと信じる。いたるところで沸き起こる葛藤、とよめきあう人格の錯綜は窓の外の音と同じように、私の信念から、また私の見据える意志の目標からは別のところにある。ええ、この色は曙に鳴く鳥の鳴き声。冷えた空気から伝わり、漆黒へと変わる。
誰かが私を呼ぶとき、自分の時間が奪われ、
途切れた電線のように不快を抱く私の心はどうしようもなく性質として根付いているように思われるが、そうした私の根性に反して、その誰かの声に応じようとする自分がいるとき、私は自身を自由だと感じる。そして、その声が心の慰めとなり鼓舞となり、次の日の目醒めを新鮮にするとき、私は声の主に深く感謝する。かつての仕事場でお世話になった人たちと、私は今日、楽しい時間を過ごした。
幼心に解いたパズル
余白に描いた馬の絵を
合う合わせるも暁の空
あゝ少しだけ知りました
淡い吐息にうちとけて
ピアノ・ソナタよ消えてゆく
幾月幾年の調律師が
しずかに心の声を聴いています
どうか知るといいわたしの不可能を
部屋でピアノを弾く少年の
空を舞う鷹に託したまなざしを
想像の拡がる空は晴れて青い
まばゆき光 まどろむ血液を掻く
午前の銀杏 かがよう滴に充ちて
体はどこまでも澄み切ったという
耳は原点から遠く離れた距離をもち
音楽の奥で鳴るサイレンが分かる
鼠捕りの罠に引っかかるとしても
沈黙する獣のようなわたし
このこころ見遣る人もなければ
あの呼吸に耳を傾けることもない
部屋の全てを言葉で満たす
それが不可能なままであるといい
冬の記憶は熱力の素だ
その煙突はどこまでも続く
まるで部屋の幾百の写真が
一階の暖炉で燃やされている
深い呼吸につられて暗くなる時計
独りで耐えぬくこともなかろうか
此の冬一等の月明かり
此の夜一人の赤き血を鎮める
冬の陽射しに焦がれた窓
たわむれの息につつまれる街
朝寝坊の布団が夢現の影を吸い
冷たい風と子どもの声が聞こえてくる
忙しい背中の少しばかりの深呼吸
たわむれの息だけが心を隠して
ペン先の閃きが揺れては滲む
半直線の遥かなる思いもたえて暁天に散る
枯葉に似た繊細な理解
ひと風吹いて斃れる左手の筆
ステンレスの鋏が月の証となって
旅詰めの括弧を解き放つ
優しい水の冷たさ
厳しい冬の暖かさ
落ち葉のしたの虫たちが
ひとえにぬくめた心あそばす
ボンタン飴をなぐさめにひとつこれから来たる冬の現実
雪の轍が導いた孤独より酷く重たいもの
夢と同じよな顔ヲして
不敵な笑みしを浮かべる現実
地獄で喘いだ朝の鶏の目ん玉が廻る
捨て置け
地獄めぐりの本も
懐に隠したノートさえも