20171226

夢見

晴天の寒空に棲む
殊ならぬ日の眠気
2017年のねむりゆく空
花を数え 旅立つ鳥

多元的な夢の針穴を
人の心の条理が通る
それが夢だと知るまでに
いくつの苦しみを数えたろうか

20171222

連理

雪を被った枝の上で鳥が鳴く
シナプスは朝日を受けて興奮し
雪の花を散らせるのだった
嵐もなく 淡々とした日の始り

水面を突いて搔きまわした夜
兀々と築かれゆく神経の牙城
連理の枝は固く結ばれ
日はいまに現成す



20171221

沸々

混濁なる鍋の音
浮き沈みする心象模様を
沸々と舌の上に乗せる
言葉がそこにはあった

多くを秘めていた氷も
陽の光にとけるように
硬くていびつな感情も
きっとやわらかくなる

20171220

面影

郷里の寺に雪つもり
妙なる樹の枝にものり
彼処に鳥を聞くように
思い出される君の声

白紙に綴られた みちびきの字
「銀」と書かれた 年末の日
しろがねと呼んだ 春の声
消えてまた 風がしきりに吹く







20171219

脱落

身体の深い呼吸は眠るよに
重なる冬の織物に関わらず
夜空の高い一等の暗がりに
悠かな先の生命を宿してく

あゝ足袋かさなる跡の思い
踏み分けゆく哲学の郷里の
知られぬことぞや多くある
身体はもはや老樹のように



20171218

青い硝子を通して見る太陽は
少しばかり硬そうだった
あれは冬のはじまりで
変幻の炎が見えていた

吹きけした蝋燭の火
かおり ゆれ とける 雪
もし貴方がいたなら
時は止まるべきだったのに

20171216

交点

去年の柳の月簾
電飾の街盛り
穏やかなまぼろしに戯れ
時を虚ろに映しけり

貴方はそこから始まったのですね
私はここから始まるのです
伝統と破壊が交錯する
器の切れ目から

20171215

無性

光陰を矢に掛けて放ち
無性の時を川の流れに見たて
儚いと呼び 詠うものたち
哀しむものたち

此の坐を大雄峰に置き
無性の間を夢に見たて
侘しいと呼び 詠うものたち
みな 有象無象の執着なり







20171214

行進

凍てつく黒鉄
シンフォニーの行進
もう寒くなどない
街を限りに闊歩しよう

緊張解れた朝日を
心理の丘から眺めるも悪くない
頞哳吒地獄の光みえて
鈍き血流の蜘蛛が這いずり廻る



20171213

脱皮

冷たい水は私の罪を知っている
渇いた喉に炎立ち
灰山と化す魂の
その不憫な姿態を暴き出す

睡気の張り裂ける朝の空気
閉ざされたカーテン
起き上がるまでの狂気
根拠なくひとつ引き鉄をひく


20171212

調性

灯りがひとつ点きました
寒き日はこれから
夜の冷たい水の無知を
しずかに充たしてきます

渦巻くことわざ
空想の肌にふれる喜び
ことごとくわたり
はじまりをまつ


20171211

巡路

テルミモアの夢地続き
寒波の法螺吹き妨げり
遠き息吹きの口蓋垂に
刹那輝きしぞある

この土地は歩調の風立ち
波々し膚をもち
西の彼岸にほど近く
鬼の骸に花ぞ咲く

行方もあらず廻りては
生へと還る笛の音
やふこそ さらば
心唯なる高き燈火

20171210

漆黒

彼是の人や他の誰にもなることはできないと、他の誰にもならなくてよいと証明できはしない。近世を神の下界として信じたように、私はまた誰も私のようになることはできないと信じる。いたるところで沸き起こる葛藤、とよめきあう人格の錯綜は窓の外の音と同じように、私の信念から、また私の見据える意志の目標からは別のところにある。ええ、この色は曙に鳴く鳥の鳴き声。冷えた空気から伝わり、漆黒へと変わる。




20171209

わたしの自由

誰かが私を呼ぶとき、自分の時間が奪われ、途切れた電線のように不快を抱く私の心はどうしようもなく性質として根付いているように思われるが、そうした私の根性に反して、その誰かの声に応じようとする自分がいるとき、私は自身を自由だと感じる。そして、その声が心の慰めとなり鼓舞となり、次の日の目醒めを新鮮にするとき、私は声の主に深く感謝する。かつての仕事場でお世話になった人たちと、私は今日、楽しい時間を過ごした。

20171208

調律師

幼心に解いたパズル
余白に描いた馬の絵を
合う合わせるも暁の空
あゝ少しだけ知りました

淡い吐息にうちとけて
ピアノ・ソナタよ消えてゆく
幾月幾年の調律師が
しずかに心の声を聴いています


20171207

半直線

どうか知るといい
わたしの不可能を
部屋でピアノを弾く少年の
空を舞う鷹に託したまなざしを

想像の拡がる空は晴れて青い
まばゆき光 まどろむ血液を掻く
午前の銀杏 かがよう滴に充ちて
体はどこまでも澄み切ったという



20171206

線分

耳は原点から遠く離れた距離をもち
音楽の奥で鳴るサイレンが分かる
鼠捕りの罠に引っかかるとしても
沈黙する獣のようなわたし

このこころ見遣る人もなければ
あの呼吸に耳を傾けることもない
部屋の全てを言葉で満たす
それが不可能なままであるといい

20171204

煙突

冬の記憶は熱力の素だ
その煙突はどこまでも続く
まるで部屋の幾百の写真が
一階の暖炉で燃やされている

深い呼吸につられて暗くなる時計
独りで耐えぬくこともなかろうか
此の冬一等の月明かり
此の夜一人の赤き血を鎮める

20171203

澄みきった冬の朝

冬の陽射しに焦がれた窓
たわむれの息につつまれる街
朝寝坊の布団が夢現の影を吸い
冷たい風と子どもの声が聞こえてくる

忙しい背中の少しばかりの深呼吸
たわむれの息だけが心を隠して
ペン先の閃きが揺れては滲む
半直線の遥かなる思いもたえて暁天に散る

20171202

小さな憩い

枯葉に似た繊細な理解
ひと風吹いて斃れる左手の筆
ステンレスの鋏が月の証となって
旅詰めの括弧を解き放つ

優しい水の冷たさ
厳しい冬の暖かさ
落ち葉のしたの虫たちが
ひとえにぬくめた心あそばす



20171201

冬野

ボンタン飴をなぐさめにひとつ
これから来たる冬の現実
雪の轍が導いた孤独より酷く重たいもの

夢と同じよな顔ヲして
不敵な笑みしを浮かべる現実
地獄で喘いだ朝の鶏の目ん玉が廻る

捨て置け
地獄めぐりの本も
懐に隠したノートさえも