峰の色気が伝わる曇天の空通り過ぎるのを知っていながら
風に耐える草野を心に刻んだ
女の陰の染みたままの心に
雨そして今 電灯の熱が点く
時針が九時を指した
玄関を風が叩く
女は横になって眠っている
その背中を見るだけで
話すことはできない
目を瞑るとしよう
それから幾月が経ち
刻まれた草野に花が咲いた
秋めく言葉が心地良い
おーい
こちらを見ている
刻まれた草野に鹿を見つけた
私のなかの何かが子どもであるとき
窓の外で蝉が鳴いていた
机に山積みの本が埃を被って
昼間の日の光をカーテン越しに浴びている
それは何処かへ行ってしまった夢の記憶
隅っこの塗装の剥げた壁に
ピアノソナタが響いて届く
時の流れそのままの風景から
便りがポストへ舞い込むように
待ち望んだ瞬間が陰を落とす
日向の喧騒が木の葉を揺らし
まるで巨人のように
平らな街を包み込んでいった
この部屋の窓は遠くのことを知らせない
月の物憂い光がこの部屋へ入るころ
私は独壇の明かりの中で
特別夢中に生きてやろうと願う