ひとり 静かに 考える
そして 死ぬ
それまで 幾つかの ことを 為した
私は 全ての データを 消した
ひとり 静かに 考える
この世の 凡ゆる 知を いだいて
そして 死ぬ
腎(むらと)を抉りとる
賢き猛禽の眼(まなこ)
世界の地図は此の者にヨリ完徹され
ヒトは亦た彼の者をこそ
越えるものなれ
二頭のイルカのうち
一頭がすでに命を落とした
落ちた命は五円の穴を抜けた
もう一頭の寿命も僅かだという
私はただ 静かにそいつを見守るだけ
五円の穴を土でふさいで
目を瞑るだけ
見て
千もの階段を
人が屈せず登っている
彼はきっと 恋する彼女について
考えているのよ
額に手を当て感触を確かめた冷たい
寒夜に光る月が
おのれの欠けらを手にするとき
私もまた充ちた心地がする
今夜の空気の冷たさが私に警告する
外に出てはいけない と
まるで親が子に言うように
悟った表情をして私に投げかける
失われた真実が此処
孤児院の簡易ベッドの上で寝んでいる
安らかな寝息は冬眠さながらに暖かい
蓄えた想い出がこぼれ落ちぬよう
強く抱きしめられながら
呼吸と共に揺れている
窓の外を見ると
高速道路を走り終えたトラックが
ヒールの高い靴を履いた
歳若き女性を呼んでいるのが分かる
オレンジ色の夜灯は空を眺めている
人間は世界的な愛を信じている
交通網が計算される
電子ネットワークが拡張される
この世のすべきことは
誰かを待つことだと言うように
人間は愛がまるでこの世の隅々まで
巡るように と期待する
そのあいだ私たちは
何を考えるともなく生きるのです と言う
運命を真似する偶然を
私たちは見守りたい と
スカートがトラックの上を跨いだ
忘れさられた旋律が
安堵の証もて眠る この夜
私もまた此処で休むとしよう
夢の紅気の流れる深い谷に
私がいる
それは夜道をひとりで歩くときのように
それは群衆の合間を抜けるときのように
それは孤独のように
なにもない
私の意志
それ以外のなにも
ふり絞った勇気がたとえちっぽけな採寸であっても
どうしてこれほど大きなものが
それを優しく包んでくれるのでしょう
でも 知っていましたか
その大きなものは
季節のくれる雪のように
溶けていくようです
路程の中央踏み鳴らし日夜跨いで 天才を呼び醒ます
文豪の斌しき道
跋前して流れる血の味好し
斐然として零れる色彩を容れる
斑斑なる心のパレット
雨が降って陽の照らすは
快晴を映す水たまり
躍如たる人の道
待ち侘びたお手紙が届きましたあゝ いつか見た綺麗な字
すみやかに するどい
冬の梢のように
いきりめく ひらめき
風の追うような
交響する音の 従うような
心強き 終止符
あなたの言葉が紡ぐ
他の凡ゆる醜さとことなる
人間の美しさ
私はその都度 恋煩いさながらの
盲目となってしまう
この上ない幸せを 感じてしまう!
「愛に飢えてる奴は始末しておけ」
それが私たちの合言葉
私もまた強く生きねばなりません
燃えよ 過ぎ去りし たわむれ降れよ 定められし すがた
咲けよ そよ鳴きし しらべ
太陽の利き手に春芽のこうべ
人が利得の流れに沿って
飛ぶ鳥 落ちる夢の限り
蛋白質の作用 ゆるやかに
巖の上の在る者の
おもかげ遠けき時の歌
鳥路に立ちぬ 鷲視の向こう世界
矢を放てば 落ちてしまう
的の見境なく 生も死も 太陽も 月もない
科学の瞬きを数え 期して待ち
死に絶えゆく人生の 頭の中の下書き台
燃えよ 過ぎ去りし たわむれ
瞳に映る 道が私のそれ
鶏晨より鳴鏑放たれ
金管の笛が祝う ロンドの愉快な笑顔
その耀きの陽の如く
子どもたちの走る姿 目に見えぬ鳥を追うよな姿
街商店を駆け抜けて 広がる空の高々と
禽羽の透けて澄みし色
鳥外の色浅き優しく
初音の響き 良き心地
追い風さながら街商店を翔り抜け
視える街並み 鶴寿千歳
鳥路を越えて 彼方へ続く
鴻象り 聳える雲の尾の永く
宵空なれば星の側を
白鷺の羽根が光り舞う
ひと気のない夜道を
鈴の音が鳴る
禽語を破り抜けた
鳳雛の声が
確かに聴こえる
初春めでたき賑わいに 鞋並み相応しき踊り数多
わたしの 或いは あなたの 主語の省略
見知った素振りで 引き付けるもの
くだらない のぼらない
果物の予想通りの 時計通りの 落下と破裂
開いた口から溢れる祝い唄
酉の知らせの 四方にこだます初日山
千代と鳴く若鶏の 人間由来の名の移ろい
非知之難也 處知則難矣
㐂ばしきも 可泣しきも
凡ゆることの基の眼ざしにて
照らされも 隠されもする
凡ゆることの基の眼差しにて
言の葉の脈動を捉え
告げよ まことの理