20180608

NEXT DAY

夜がしんみりと過ぎて、月が黒衣のすき間をゆく。午前三時を過ぎて、夜寝に静まった幾千の部屋のなかにまだ明かりの点いたのがある。それが私の部屋です。電機の光りと指の躍りで、営む世界があります。忙しない梅雨の随に月が現われるので、どうも憂き沈むのは相応しくない。そうしてこの時間を心地の良さで、充たしています。羊の腸内を夢に見つ、吹く風をばよく身に浴びて。私は太陽の知らないところへ、それからきっと私自身も知らないところへこの陶酔のうちに誘われてゆくのだろう。次の日こんどは、貴方が誘われてゆくのかもしれない。このためにはお酒も煙草も必要なくて、愛も真実も必要ない。

20180606

NOCTURNE

6月の雨に濡れ、冷たい夜が深くなるにつれ、憂い身を潜めて目を瞑る者。音楽は寝床に就く。夢のなかでも私はきっと走りまわって、必死の奔走が乾いた土を雨と共に弾かせ、轍に水のたまるように夢の痕跡に水面が張る。誰の為のものでなければ、この夢も幻に過ぎない。貴方に送る私の言葉はいつかのそれとは異なって、まったく朝というものを忘れてしまった。目覚めはいつも暗い夜。それだから今日も、ヘイデンのベースが心地よく聴こえたのだった。私の心は未熟な者の思想のように、同じ環をいつまでもぐるぐると巡って、口を開けたまま、星ひとつさえ見えやしないのに、空をじっと仰いでいる。

20180603

ピアノ

私は声によって感情を表現するのが苦手だ。声量や抑揚による感情表現の箱に頑丈で冷たい鍵が付いている。でも私の感情は、少なくとも私の内部においては大きく細かく蠢いている。感情は身体全体の律動によって大きく表され、他方で言葉によって微細に表されるという具合だ。そういうところで私はピアノに似ているのかもしれない。どんなに指にヴィブラートを加えようとも、音を鳴らすのは小さなハンマーなのだ。