吊り鉢のフクシアがよく咲いた
夏の名残に生気を吸い取られもせず
嵐の恐怖に打ち克ち 恋の純情を背にして
華やかな大輪を歓びの心地でみせる
深いともない朝陽の移ろい
舞台女優さながらの見目形
煌めきは慎ましく 花は高貴に垂れる
風のような青年は
恋しさの影たつ小路に花を見つけた
一期の行方も分からぬままの闇路は
しがみつこうとした空を遠のかせ
彼の鮮やかな運命のめぐりを黒く滾らせた
それは夜だった
心あてに恋人の名を呼び
探りとった冷たい手を引き寄せる
彼女の姿を今やこの目で見ることができる
心の孔をやっと閉ざすことができる
まなざしの扉をおしひらけ
籠りがちな鳥たちを羽ばたかせよ!
ああ だけど窪んだ瞼の陰よ
何が彼の目を閉ざしたままにするのだろう
喧騒のなかの沈黙のように
心のなかのひときわに花は咲く
それは忠実なまなざしをもち
悲しみの雨風渦まくなかで明日の朝を待ち
怒りの雷鳴轟くなかで雲の奥をのぞむ
それは風に吹かれて去る朽葉のように
人をひとりぼっちにさせ
芽立つことのない花のように
人の心の在処を忘れさせもする
私は今朝、夢をみた
が、みなかった
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