20160621
天と叫び
暑苦しい世の中にあって、その圧迫感から、人は真実よりも嘘を吐きたがる。なるほど、この世は拷問に満ちている。そうだ、この手枷足枷が私の影をこれほどいびつにしている。ああ、雨の音も雷の轟も、我が部屋の中では天蓋の星と共にある。雨に打たれて、紅色の口づけを味わったグラスが溢れるまでワインをまるであらゆる転機が訪れたと祝わんばかりに注がれている。後々知ることだがそれはシャトー・マルゴーという名の葡萄酒である。もはや大人びた若者たちはまるで犬が匂いを嗅ぐように這い蹲って零れる赤ワインを吸うように飲んでいる。誰かに教えてもらったのだろうか。雨音が強くなり、暗がりの部屋を雷光が時折驚かせ、仰天の星はかつてないほど美しい。細やかな光と影があり、それで私は犬を、蝶々を、そして鳥を描いた。飛べ、飛べ、飛べ。雷雨の真ん中を飛べば、誰もがお前に畏れ入る。ああ、しかしなんと可愛らしい小鳥よ、私の腕に抱かれて、ともに寝床でおやすみするか、お前の翼は私の手のなかにあり、もうこわがることはない。さあ、寝なさい。私はお前が眠っている間に、あらゆる書物を閉じてこよう。こんな夜中になんという労苦が待っていることか、それでも為さねばなりませんから、私は向かうのです。空っぽの瓶はMaregauxという文字を雨雲へ向けて横たわっている。まるで革命の最中に息絶えてしまった者のように。若者たちは雨降る街中をまるで流れ弾を避けるように走っていく。対向の人間と案の定ぶつかってしまった人々は自分の足の傷口に何度も口づけをした。啄木鳥が樹から餌を捕るように、それはとても速かった。街の通りの行き止まりで二人の男女に出逢った。私には唐突に思えたが、女が男の顔にお面を被せると彼女は男の頬を引っ叩いた。お面は飛んでいき男の頬は赤めいていた。二人は幾度かそれを続けたが、お面がついに壊れてしまった為に二人はそのまま睨み合い、時の問題と思ったか表情が和らぐと、堪らず男女は抱き合った。微笑ましい君たちよ、ファンファーレが欲しいなら、あの天に。序曲が教えてくれるのは、時の顚末、運命の轍を通る風の優しさ、もう、知ってしまったからには、抗いようのない陽の眩しさ。ああ、二人は行ってしまわれた。お面を拾ったお爺さんが裏面に女性を描いている。初恋の女性だと言って彼は涙を流している。ところで皆さん、赤児の思い出、かの無力によっては、誰もが不可能を知らないもの、それだけ目は輝く。一方で人々は自分の無力を嘆くが、そのくせ形而上はお好きでないときた。いったいそれなら、自分の無力はなんだというのです。果てなく延びる影の脚を追いかけて、その手で何をつかもうというのです。無力を知るというのは、いつから臆病者の常套句になったのか。この人を見よ、気まぐれ運命があの通り、雨雲と共に消えていく。小鳥よ、その足はいつから、立つことができたのだろう!
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otonarikaminari
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