20160609
理想
虚言ばかりのように思えて、自分が嫌になる。言葉だけで生きようとすると気が狂う。不誠実が私の嫌悪の対象であるのに、生まれ持った性質のようにまとわりついて離れない。いつでも姿を見せるそれが自分の本質であり、と私が思えば、お前の言葉はいつも虚である、と哀しみの弁証が心を諭す。偽りが下手で、そのくせ寄せ集めの小細工で隠れようとするからである。そうではない、と仏僧は悟る。世俗の中では到底生きることもままならないが、それが離世に至ればなおさらである、と老師は語る。君は充分ふつうじゃないか、と友は言った。実直でなければならない、しかし、私は自分でさえも裏切ってしまうではないか、そうしてまた周りの人々をも巻き込んでしまう、それがかなしいのではないのか、それが堪らなくつらいのではないのか。そうであっても、すべきことは何一つ変わりはしない。こういうときがある、不可視の不安の中で背負うものよりも、実直に立ち、自然に背負わなければならないものの方が断然と軽いのである。心の中ではいつのまにか、あの柔和な水を凶暴にする雨雲が頭上にかかる。生き辛さにまみれて消え失せるのがいいか、その大きさを測り知ることは誰にもできない。身体は上手く動かない。粘着質の習わしだけでない、言葉がときおり枷となってそれを阻む。偉大なる音楽家は本当に運命の扉を開いたのだろうか。そこから何が、見えたのだろうか。底抜けのまなざしで本当のことを指し示してみよ、と生きていくのに最低限必要なだけの自信で私が目指したそれは、何もない、と沈黙が説く、霧のまだ奥深くにある。
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otonarikaminari
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