君よ、赤みを帯びた艶やかな頬は、胸に刻まれた思い出の暖かさを知っているのでしょう。さかしらに迷いを覚え、憂き身に苦しんだ夜の、よろず鮮やかな花明かりと共に、今はその時を静かに待つ月を見ています。いま、君は何を考えているでしょう。当たり障りのないことを聞いたとして、君なら絶えて応えることもなく、十五の齢に知った初心な羞じらいの結び得た友情を、私は消灯のあとで忘れ去らなければならないのでしょうか。君がまだ近くに居るというなら。ここに居たら、きっと楽しいのに!私は吐息を潜め、君の心の響めきに耳を傍立てるのに。でも君はきっと、それをよく選んだのです。それならば、それならばどうか、よく生きてくださいますよう。自分を知るのは、世の全ての百科事典では間に合わず、人の一生では重過ぎる。曙が妙なる明かりより、川面に映える薄光り、瞳の奥のひこばえに高貴な意志は授けられる。
夜は静かで、心は軽い。先きの二人は居なくなった、私をのこして。残された私も、ついに居なくなるだろう。来たる曙光に心をば寄せて、私はまだ空を見上げるが、それをもまた、空しく思う。晩成の道はながく、時を知らせる風もない。自分に耐えられないのさ、本当はもっと、強いのにね。でもいつしか、と思う。いつしか私は、月でもなく星でもなく、曙光のようでありたいと。