20160605

香水

潮風が去年の肴を懐かしませる。鮪のかま焼きを食べ、食事以外の音がないような、静かな蕎麦屋ですだち蕎麦を食べた。夏の思い出がよみがえる。海の街に響く鴎の声に広々とした空を感じた。ビル群に妨げられた視界の向こうに海があると分かる。この街はそれほど窮屈だったろうかと私は思った。その大きさを知る人間にとっては、私は鼠のようだ。私のまだ知らない場所がたくさんある。鳥のようには、それがどれほどなのかも把握し得ない。

さて、此処は何処だろう。香しき乱れ、満員電車の人間たちが想像させるのは人むらの喜劇である。雑多な衆群はそれだけでどこか滑稽さを思わせる。歌劇「こうもり」の楽曲がよく似合っておもしろい。私も周囲を窺う者の一人だ。いまにも砂時計が選り好みのご馳走で人々を駆けっこさせようとしている中で、誰もがふと歌い出すかもしれない、そしたら皆、合わせて唱うだろうか。誰もがふと転げて見せるかもしれない、そしたら皆、途端に踊り出すだろうか。可哀想なガブリエルも、ただ一つの甘い慰めを胃の中に見つけるかもしれない。

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