20180220

枝の雪

枝の雪、如月の夜は吹く風蕭々として私にも似合うと思った。ふくらんだ苺大福が冷たい風を受けた時に春を心のなかで読む。肌をさす六花の風、甘いショコラのかおりもなく、風媒花の無言の営みに耳を傾ける。痛々しい土面へ寒空の隙間から陽の射して、生気が久しく起こる。私はいつの日か他の生気を吸いとる鬼だと思った。そのような者までもが、冬は努めて陽にあたらなければ自然と気が滅入る。身辺に横たわる気色の悪い音や言葉が身体の穴に冬籠りして、息が詰まりそうになる。

20180214

THE FIRST DAY

夜のサイレンが赤く響いた。遠退いてからそれは破裂した。五線譜から飛び出た音符のように。水流から抜け出た魚のように。ネットワークの失われた街のように、静かな夜が戻ってきた。今夜は一気に、宇宙と地球を造るんだ。

20180213

指標

私一人で十人のあとを追いかけた。自分の心の繊細な部分を知った。余りに繊細なので、冬の向かい風で傷だらけとなった。「もういいかい。」「まあだだよ。」声だけ夕空にこだまして、影は密やかに円くなる。陽を受けぬ日が続き、憂いも深くなるけれど、心根の初々しく居ますならば、きっと青々しい花を咲かせる目をひらこう。嗚呼春よ、待ち遠しい。鳥の声が愛おしい。傷だらけの皮膚が守ってきた言葉がある。指紋みたいに、それはきっと私だけの言葉。光を照らして明らかにする。

20180211

土塊の音

詩は荒天の廻る世に
沸々と跳ねる土塊だ
大火山の言い伝え
忘れられた物怪唄さ

藝技三千の途半ば
ガラクタあつめの流行り病
夢現の後の世は
後ろ髪とて掴めまい


20180208

冬の定点

詩は公転する地球の
せっかちな欲望だ
詩は逆転する地球の
月から眺む戯れだ

初心を置き忘れた同級生よ
お前とそれとの間の影が
また一段と深くなるせいで
いつまで経っても日は昇らない

20180204

少年時代

死の境を灰色の風が這い
板を叩く包丁の乾いた音が鳴る

オフィス街に秋の陽の照りつけ
道端のチョークで描かれた絵を見る

向かいの家の住人が喧嘩し
私はサッカーボールを塀にぶつけた

昔の壺の中身が撒き散らされるように
排水孔へ落ちる朱い液体

朝の寝惚けの醒めぬ時
誰とも知らぬ影を追いかけ
抜き去ることの楽しさを知った

私の脳味噌が蒼い血管を浮き立たせる
私はへばりつく死生観を喰い千切った
きっとそれが私にはよかったのだ




20180203

ノン・リニアリティのセンチ

詩は公転する地球の
温暖を夢見る
せっかちな欲望だ
初心を置き忘れた同級生だ

電車の片隅は
思い馴れた場所
たくさんの色が混ざる夜
速度が直きに消してしまう

目的の駅まで走り
私を降ろしてそれから走り去る
みつけてひろった景色を
どこへ急いで運ぶのだろう

線路の上をゆく電車を
星や雲が見つめている
うごきまわる虫のせいで
夜の灯りも悶えて失せる