MUSE
十数年前に音楽を通して宇宙を知った。それはロマンにあふれており、あふれたロマンは散りに失せ、ふくらみ、裂けんばかりの爆音と伴に還る。ただひとりポツンと私は、恋や苦しみといったものが衝突したり、ひたすら廻転しながら動くのに、拡がる宇宙の前衛で没頭した。漆黒の意思に支配された身体が小さな部屋の中で陶酔と虚脱を交互に繰り返した。十数年前の音楽を通して今でも宇宙を見るが、それはロマンにあふれており、たまらなく恋しい音楽の女神たちがそのロマンの欠けらを抱えて去っていく。私は追いかける。ドイツの音楽家が鍵盤から和音を激しく打ち弾き、粗野な葛藤のなかを走り抜けるならば、ロシアの音楽家は交響する憧憬を星いっぱいに広げ、降り注ぐ小片を拾い集めていく。喜びや哀しみのすべてが衝突するという、宇宙の或る点で私は人生を営んでいる。遥か彼方からこの点を見れば、そこにはもう何も見えないかもしれない。点の所在を探す私は、今度はロマの音楽に乗って踊っているのだ。
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