20170124

静かに

ひとり 静かに 考える

そして 死ぬ

それまで 幾つかの ことを 為した

私は 全ての データを 消した

ひとり 静かに 考える

この世の 凡ゆる 知を いだいて

そして 死ぬ

20170118

歴史

腎(むらと)を抉りとる
賢き猛禽の眼(まなこ)
世界の地図は此の者にヨリ完徹され
ヒトは亦た彼の者をこそ
越えるものなれ

20170117

イルカ

二頭のイルカのうち
一頭がすでに命を落とした
落ちた命は五円の穴を抜けた
もう一頭の寿命も僅かだという
私はただ 静かにそいつを見守るだけ
五円の穴を土でふさいで
目を瞑るだけ

見て
千もの階段を
人が屈せず登っている
彼はきっと 恋する彼女について
考えているのよ



20170116

額に手を当て感触を確かめた
冷たい
寒夜に光る月が
おのれの欠けらを手にするとき
私もまた充ちた心地がする
今夜の空気の冷たさが私に警告する
外に出てはいけない と
まるで親が子に言うように
悟った表情をして私に投げかける
失われた真実が此処
孤児院の簡易ベッドの上で寝んでいる
安らかな寝息は冬眠さながらに暖かい
蓄えた想い出がこぼれ落ちぬよう
強く抱きしめられながら
呼吸と共に揺れている
窓の外を見ると
高速道路を走り終えたトラックが
ヒールの高い靴を履いた
歳若き女性を呼んでいるのが分かる
オレンジ色の夜灯は空を眺めている
人間は世界的な愛を信じている
交通網が計算される
電子ネットワークが拡張される
この世のすべきことは
誰かを待つことだと言うように
人間は愛がまるでこの世の隅々まで
巡るように と期待する
そのあいだ私たちは
何を考えるともなく生きるのです と言う
運命を真似する偶然を
私たちは見守りたい と
スカートがトラックの上を跨いだ
忘れさられた旋律が
安堵の証もて眠る この夜
私もまた此処で休むとしよう
夢の紅気の流れる深い谷に
私がいる
それは夜道をひとりで歩くときのように
それは群衆の合間を抜けるときのように
それは孤独のように
なにもない
私の意志
それ以外のなにも












20170108

小さな芽

ふり絞った勇気が
たとえちっぽけな採寸であっても
どうしてこれほど大きなものが
それを優しく包んでくれるのでしょう

でも 知っていましたか
その大きなものは
季節のくれる雪のように
溶けていくようです

20170107

小川

路程の中央踏み鳴らし
日夜跨いで 天才を呼び醒ます
文豪の斌しき道
跋前して流れる血の味好し
斐然として零れる色彩を容れる
斑斑なる心のパレット
雨が降って陽の照らすは
快晴を映す水たまり
躍如たる人の道




拝受

待ち侘びたお手紙が届きました
あゝ いつか見た綺麗な字
すみやかに するどい
冬の梢のように
いきりめく ひらめき
風の追うような
交響する音の 従うような
心強き 終止符
あなたの言葉が紡ぐ
他の凡ゆる醜さとことなる
人間の美しさ
私はその都度 恋煩いさながらの
盲目となってしまう
この上ない幸せを 感じてしまう!
「愛に飢えてる奴は始末しておけ」
それが私たちの合言葉
私もまた強く生きねばなりません

20170104

燃ゆ

燃えよ 過ぎ去りし たわむれ
降れよ 定められし すがた
咲けよ そよ鳴きし しらべ
太陽の利き手に春芽のこうべ
人が利得の流れに沿って
飛ぶ鳥 落ちる夢の限り
蛋白質の作用 ゆるやかに
巖の上の在る者の
おもかげ遠けき時の歌
鳥路に立ちぬ 鷲視の向こう世界
矢を放てば 落ちてしまう
的の見境なく 生も死も 太陽も 月もない
科学の瞬きを数え 期して待ち
死に絶えゆく人生の 頭の中の下書き台
多く残りし土塊を
溶いて砕いて見もせずに
焔さかりの口許へ遣る
燃えよ 過ぎ去りし たわむれ
瞳に映る 道が私のそれ







20170103

鳥の鈴

鶏晨より鳴鏑放たれ
金管の笛が祝う ロンドの愉快な笑顔
その耀きの陽の如く
子どもたちの走る姿 目に見えぬ鳥を追うよな姿
街商店を駆け抜けて 広がる空の高々と
禽羽の透けて澄みし色 
鳥外の色浅き優しく
初音の響き 良き心地
追い風さながら街商店を翔り抜け
視える街並み 鶴寿千歳 
鳥路を越えて 彼方へ続く
鴻象り 聳える雲の尾の永く
宵空なれば星の側を
白鷺の羽根が光り舞う

ひと気のない夜道を
鈴の音が鳴る
禽語を破り抜けた
鳳雛の声が
確かに聴こえる






 

20170102

初旭


初春めでたき賑わいに 鞋並み相応しき踊り数多
わたしの 或いは あなたの 主語の省略
見知った素振りで 引き付けるもの
くだらない のぼらない
果物の予想通りの 時計通りの 落下と破裂
開いた口から溢れる祝い唄
酉の知らせの 四方にこだます初日山
千代と鳴く若鶏の 人間由来の名の移ろい
非知之難也 處知則難矣
㐂ばしきも 可泣しきも
凡ゆることの基の眼ざしにて
照らされも 隠されもする
凡ゆることの基の眼差しにて
言の葉の脈動を捉え
告げよ まことの理