20170904

寡黙な眼

誰も書かなくなってしまった世界は風に吹かれる紙屑と襤褸くて酷く損壊した建て物だけがそのまま遺されてしまった。家財は玉石の見境なく散乱して、破れた鏡は天井を床に落としていた。貴方が書かなくなってしまったものが、きっとここにあると分かる。今や恨めしい世界を書くのも大変だろう。煌びやかな暗号だけが生き残って、それを読み解くことばかりに没頭して、どこかで虚しさを感じている。誰も書かなくなった世界を歩いていると、寡黙な貴方をじっと見つめているようだ。

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