20160521

たそがれの手紙

思うように長閑な涼しさはなく、春ひそみ、雲なき空の汗ばむ陽気が夕べには空を紅く染める、忙しない毎日です。私も貴方も何気なく、ざわつき通しで、楽しい日々を共に過ごしているようなのに、心底でただよう言われぬ哀しさが、ひとりの夜を充たします。海老根の花が器に乗って、私を慰めるようです。それはもしかしたら、風の吹かない、月明かりのひっそりとした夜の忍び音を聞いたかもしれない。暗がりの部屋の忍び寄る思ひ寝を見たかもしれない。ずっと私はこのままなのでしょうか、そんな問いに海老根の花は黙ったまま。この花のように、貴方を隣に引き止められるなら、私と共にこの花が語りかけてくれるなら、それなら、いいのに。

私は先立って貴方に感謝をするつもりです。ありがとう、夢現の定かでなくとも、幸せが紡いだ日々の思い出は私を確かに安心させます。好きな人と一緒に居た尊い時間は、必ず自信を育むもの。今でこそ頼りなくたって、私のことは心配しないで、それぞれの侘びしさや不安を、目の前を霞ませる涙を拭くように、自らの手で取り去っていきましょ。そうすれば私たち、きっと大丈夫。約束しましょう、貴方を忘れるなんてことは決してない、なぜなら貴方との思い出が、いつだって花を咲かせてくれるのだから。ねえ、素敵な時間を過ごしました。気が狂うほどの、夢中になるほどの、素敵な時間がありました。かけがえのない人よ、ありがと。花よ、鳥よ、幸せはあるようです。黄昏のように去っていく、幸せが。目を閉じるように、静かな幸せがあるのです。

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